建築費の上昇が変える賃貸市場 収益物件オーナーの出口戦略を考える
2026/07/26(日)

資材や人件費の上昇を背景に、賃貸住宅の建築費が高止まりしています。都市部では家賃への転嫁である程度吸収できても、地方では同じようにいかない場面が増えてきました。この変化は、すでにアパートや一棟マンションをお持ちのオーナー様にも関わってきます。
建築コストの上昇が新築の採算を狭める
建築費の上昇は統計にも表れています。国土交通省の建設工事費デフレーター(建設総合)は、2015年を100とした水準で2025年8月時点に130.9となり、およそ10年で3割ほど上がりました。人件費の目安となる公共工事設計労務単価も、2026年3月適用分で14年連続の上昇となり、初めて日額25,000円を超えています。
都市部では家賃の引き上げでコスト増をある程度吸収できますが、家賃相場が動きにくい地方では、上がった建築費を賃料に転嫁しづらいという声が聞かれます。そのため、新しく建てて貸すという従来型の賃貸経営は、地方では以前より難しくなってきたと言われています。
一方で、家賃や設備だけで比べられるのではなく、そこにどんな暮らしがあるかという価値観で選ばれる住まいをつくろうとする動きも出てきました。地域の歴史や風景を生かす「共感」を軸にした住まいづくりです。
地方で家賃を上げにくいという事情
岡山や倉敷のような地方都市でも、この構図は当てはまります。多くの入居希望者は、まず不動産ポータルサイトで駅からの距離、築年数、設備、家賃を並べて比較し、似た物件が並ぶと最後は「どちらが少し安いか」「どちらがきれいか」で決まりやすくなります。
この選ばれ方は、すでに物件をお持ちのオーナー様にも影響します。周辺に新しい物件が増えれば、条件の近い物件どうしで家賃や設備の競争になり、築年数を重ねた物件ほど選ばれにくくなりがちです。家賃を下げれば入居は決まりやすくなりますが、そのぶん利回りは下がり、資産としての評価にも響いてきます。
つまり建築費の高止まりは新築だけの話ではなく、既存の収益物件が置かれる競争環境そのものを少しずつ変えていきます。新築が鈍る地域では競合が増えにくいという見方もありますが、価格や条件で比べられる市場のままでは、差別化の余地が限られるという課題も残ります。
選ばれる理由をどこに置くか
これからの地方の賃貸経営では、「似た物件の中で少しでも安く・きれいに」という土俵から一歩離れて、選ばれる理由をどこに置くかが問われそうです。建物のグレードや事業収支といった土台は欠かせませんが、それだけでは価格の競争から抜け出しにくくなっています。
とはいえ、すべてのオーナー様が新しいコンセプトづくりに乗り出せるわけではありません。立地や築年数、資金の状況によっては、無理に手を入れるより、市場が動いているうちに売却して次の選択肢を考えるほうが合理的な場合もあります。とくに家賃の下落や空室が続いて利回りが下がってきた物件では、持ち続ける負担と売却で得られる資金を早めに比べておきたいところです。
まとめ
建築費の上昇と地方の家賃をめぐる変化は、収益物件の価値の見え方を少しずつ動かしています。だからこそ、今の市場での評価額を確かめ、保有か売却かの選択肢を並べておくことが、後悔のない判断につながります。
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出典:国土交通省「建設工事費デフレーター」、「公共工事設計労務単価について」
