法人で不動産を持つオーナーが今すぐ知っておきたいこと——非上場株の相続ルール、60年ぶりの大改正が動き出した
2026/04/27(月)

2026年4月 | 収益物件オーナー・法人保有の方へ
いま、相続税のルールが静かに変わろうとしている
「法人で不動産を持つと節税になる」——そう聞いて、物件を法人名義にしてきたオーナーは多いかと思います。
その節税の仕組みの一部に、今まさにメスが入ろうとしています。国税庁が、非上場株式の相続評価ルールを抜本的に見直す方針を固め、2026年4月に有識者会議を立ち上げました。実現すれば、現行ルールが定められた1964年以来、初めての大幅改正となります。
改正が検討されている制度
財産評価基本通達
1964年制定。60年以上ぶりの見直し
評価方式による評価額の差
最大4倍
会計検査院が2024年11月に指摘
新ルール適用の見込み
2028年1月〜
2027年度税制改正大綱へ反映予定
出典:国税庁発表、日本経済新聞報道(2026年4月)、会計検査院報告(2024年11月)
そもそも、なぜ「法人保有=節税」だったのか
不動産を法人で保有する場合、相続が発生したときに動くのは「不動産そのもの」ではなく「その法人の株式(非上場株)」です。
非上場株式には市場価格がないため、国税庁のルールに従って評価額を算出します。このルールに「類似業種比準方式」という方法があり、配当や利益の水準を調整することで評価額を大きく引き下げることができました。
会計検査院の調査では、評価方式の選択次第で同じ会社の株式評価額が最大4倍の差になるケースがあることが確認されています。中には実際の価値の10分の1以下になる例もあったとされ、「評価の公平性が確保されているとはいえない」と指摘されました。
何が変わろうとしているのか
国税庁はこれまで、明らかに行き過ぎた節税に対して「総則6項」という例外規定(いわゆる”伝家の宝刀”)を使って個別に対応してきました。しかし裁判で国が敗訴するケースも出始め、個別対応に限界が見えてきました。
そこで今回、ルールそのものを見直す判断に至ったというわけです。今後の議論では、規模の大きな法人の株式は評価額が上がる方向で検討が進む見込みとされています。
収益物件を複数保有する法人オーナーにとっては、相続時の評価額が想定より大きく上がる可能性があります。これまで「節税対策として法人化してきた」という方こそ、早めに現状を確認しておくことが重要です。
これまでの経緯と、今後の見通し
| 時期 | 状況 | 内容 |
|---|---|---|
| 2024年11月 | 済 | 会計検査院が報告書を公表。評価方式の不均衡を指摘し、事実上の見直しを要求 |
| 2026年4月 | 済 | 国税庁が有識者会議を設置・初会合。租税法・会計学・会社法の専門家、商工会議所・税理士会なども参加 |
| 2026年内 | 進行中 | 有識者会議で議論を継続。2027年度税制改正大綱への反映を目指す |
| 2028年1月〜 | 予定 | 新ルール適用開始(見込み)。この日以降に発生した相続から新評価ルールが適用される予定 |
地方都市の収益物件オーナーへの影響
都市部の大規模法人に比べ、地方都市の収益物件オーナーは「中小規模の法人」を使うケースが多い傾向があります。現行ルールでは小規模法人ほど「純資産価額方式」で評価されることが多く、もともと節税余地が限られているケースもあります。
一方で、不動産の含み益が大きい場合や、物件数が多い法人では影響を受ける可能性があります。自分の法人がどちらのケースに近いかは、顧問税理士への確認が必要です(※個別の状況により異なります)。
また、改正と同時に「事業承継税制をより使いやすくする」方向での議論も進む見込みです。売却・継承・法人解散など、選択肢を広げておく意味でも、早めに動くことが有利に働く可能性があります。
※本記事は国税庁・会計検査院・日本経済新聞等の公表情報をもとに構成しています。税務上の判断は必ず専門家(税理士)にご相談ください。改正の詳細は今後の有識者会議の議論により変わる可能性があります。
